ドクターおはげさん

薄毛と戦う現役内科医の記録

薄毛の世界史 ~1900年代前半まで ~カツラ、育毛剤、育毛装置、そして植毛へ~

人類と薄毛の戦いの歴史

どうもこんにちは。ドクターおはげさんです。

今回も前回に引き続き、人類と薄毛の戦いの歴史についてお話していきます。

前回の記事はこちら↓

 

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前回のまとめ

・紀元前3000年頃~アッシリア人シュメール人クレタ人、カルタゴ人、ペルシャ人、ギリシャ人などの上流階級の間で、"かつら"が流行
・紀元前1500年頃~エジプトで薄毛の治療薬の開発
・紀元前420年頃~ヒポクラテスが薄毛の治療薬を開発するとともに薄毛への外科治療を提案。「ハゲたくなかったら金玉を取りましょう。」
・紀元前44年頃~ユリウス・カエサル月桂冠で薄毛対策を始める

今回は前回以降のお話をしていきます!

300年代頃

時代は変わって西暦300年頃、ローマでキリスト教が広まると、教会はかつらを批判し始めました。

薄毛の治療薬も実質的には存在していなかった時代ですから、薄毛のコンプレックスへの対処法は基本的には隠すことしかないような時代です。

そんな時代ですが、キリスト教においては"かつら装着は破門"というくらい徹底的に糾弾されていたようです。


当時は教会が強い権力を持っていたこともあり、しばらくの間人類の薄毛隠しの歴史は刻まれないこととなります。

1000~1600年頃

時代はそこから数百年経過し、西暦1000年代、イングランド王のヘンリー1世が髪を切る代わりにウィッグをつけるようになったことからウィッグが再流行します。

このヘンリー1世に関しては薄毛隠しのためではなく、髪を切りたくなくてウィッグをつけていたとのことです。

確かに中世ヨーロッパの貴族のイメージはおしゃれでウィッグをつけているイメージが強いですよね。

ヘンリー1世


また、その後フランスでかつらが大流行したのは、ルイ13世が薄毛をカバーし、シラミから身を守るためにかつらを着用し始めたためと言われています。

それにならって他の宮廷人や上流階級の人々もかつらを身に着けはじめ、かつらは富と権力を象徴するようになったのです。

薄毛隠しを転用して富と権力の象徴としているあたりがうまいことやるなってかんじですよね。
薄毛を隠せて富と権力まで誇示できるとはいい時代だなぁと思います。

ルイ13世

 

また、ルイ王は40人ものかつら職人を抱え、床屋を除いてかつらをつけていないルイ王の姿を見ることは許されかったとも言われており、相当コンプレックスが強かったことが想像できますね。

さらにこの時代ではかつらの製作と維持(毎日香水と白粉をつける)にお金がかかるようになり、かつらは非常に高級品となってきます。

高級がゆえにかつら泥棒が出現し、かつらを奪って姿を消したというエピソードもあったようです。

かつら泥棒ってなんかシュールですが盗まれたほうは気が気じゃありませんよね。

1700年代

1700年代になると、アメリカの上流階級の人々も、自分たちの重要性と「階級」を高めるためにかつらを着用するようになりました。しかし、この「かつらブーム」は長くは続かず、アメリカ独立戦争とそれに続くフランス革命により影を潜めていくことになりました。

1800年

この時代には、数多くの薄毛治療薬が市場に出回り始めました。
そう、何の根拠もないインチキ育毛剤がめちゃくちゃ大量に発売されたのです。

さまざまな名前で様々な種類が発売されていたようですが、ものによってはアルコール、水、着色料だけで作られたりしていたものもあるとか・・・。

現代ではさすがにそこまでひどい例はなさそうですが、コンプレックスを弄ぶような商品、ビジネスが横行しているのは今も昔も変わりませんね。

大昔の育毛剤


また、イギリスでは冷たいインドティーを頭皮に塗って、そこにレモン汁を揉みこむという斬新な薄毛治療も行われていたようです。

冷静に考えると効きそうもないのですが、藁をもすがる気持ちで「良いと言われている方法」すべてを実践してみたくなる気持ちは痛いほどよくわかります。

1900年代

1900年代に入ると、「帽子をかぶると抜け毛が増える」という説が生まれました。

これは現代でも耳にすることがある説ですね。

この時代、都市部では多くの男性たちが毎日帽子をかぶって通勤しており、その男性たちの中に「ハゲてきた」と訴える人が多かったのです。

その結果として「日光浴」と「空気浴」をすることで、髪と頭皮を「呼吸」させるよう男性に呼びかけるようになったという経緯がありました。

頭皮が皮膚呼吸できないから!とかいうやつですね。

実際人間の酸素供給はほぼ肺呼吸で保たれていますし、帽子をかぶったところで帽子内の酸素濃度がそんなに下がるとも考えにくいです。

また、帽子をかぶることで例えば皮膚が炎症を起こすなどすれば部分的に抜け毛が増えて薄毛傾向になる可能性はありますが、実際多くの人が気にしている薄毛は男性型脱毛症=AGAですので帽子の有無は関係ありません。

まぁそもそも帽子をかぶってる人でハゲてない人も大勢いることから帽子がハゲの根本的な原因ではないってのはわかると思うんですが、何となくそれっぽい感に騙されちゃうんでしょうね(笑)

また、産業革命の時代には様々な育毛装置も発売されます。
装置による吸引力を使用して「頭皮を鍛え、血液を循環させ、縮んだ毛根に栄養を与え、髪を成長させる」という目論見の商品も発売されていました。

吸引装置を使用する様子

 

その後には電気を利用し、電気を帯びた櫛を頭皮に充てることで育毛を促す機器も発売されています。

電気櫛

なんか紫に光っててお洒落ですよね(笑)


1925年

1925年には静電気、磁気、熱、振動を利用して血行を良くし、毛穴の詰まりを取り除き、毛球に栄養を与えるという名目で「サーモキャップ」という装置が発売されました。

この機械は、熱と特殊なアクチニッククォーツ光線の青い光で、ハゲを治し、抜け毛を防ぐとうたったもので、これを1日15分使用し、加えて専用のトリートメントやシャンプーなどを塗布するよう勧められてました。

サーモキャップ




ですが結局これも何の治療にもならないことが分かってます。

なんかほんとにこの業界って今も昔もやってることあんまり変わらないですね。

1939年

この時代になるとようやく本格的に薄毛の治療に医学が介入し始めます。

植毛です。

しかも植毛技術は最初日本で開発されたといわれています。

1939年に日本の皮膚科医、奥田正二先生が日本皮膚科学会誌の中で、頭皮、眉毛、口ひげ、陰部から失われた毛髪の代わりに植毛グラフトを使用するアイデアを検討しました。

患者の後頭部から毛包を取り出し、その毛包を新しい場所に移植することに成功しましたが、第二次世界大戦のために西洋ではほとんど注目されませんでした。

そしてこれがその後にアメリカの皮膚科医であるノーマン・オレントレイヒに最初の植毛を行わせることとなったのです。

まとめ

いかがだったでしょうか。

1900年代に入ってくるとあからさまに人類の悪足掻き感が増してきてますね。

そしてようやく医療が薄毛の治療にメスを入れ始めました。

次回は1900年代後半から、薄毛の世界史をお伝えしていきます。

当ブログのテーマ 

当ブログは実際にAGA治療を患者としても、医師としても実践しているDr. ハゲがリアルなAGA情報をお届けするブログです。

コンプレックスビジネスの闇と向き合い、市場の健全化をはかりながらコンプレックスの終着点を探していくことを目的としています。

当面の目標

色々と書いてきましたが、AGA患者としての立場から考えて、AGA治療は医学的なエビデンスの視点とコンプレックス要素によるQOLの視点という複合的な要素があるため非常に難しい医療だと感じています。
ただガイドラインに沿って薬を出すだけ、ましてやガイドラインにないエビデンスもろくにない高額な治療を、ろくな説明もせずに提供する悪徳なクリニックが多い中で患者さん側の需要をしっかりと満たせているクリニックがどれほどあるのかと考えてしまいます。

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